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【2020年度 災害対策/レジリエンス コラム第5回】水害から家族を守る家の特徴

 近頃は梅雨明けが例年に比べ遅く、梅雨前線が長く日本列島に停滞することが多くなってきたように思います。日本各地ではダムや下水道など治水に関わる事業が進んでいるにもかかわらず、局地的な大雨による洪水や、浸水などが後を絶ちません。2020年7月に発生しました熊本の豪雨では河川付近の道路の断絶や、崖崩れなども発生し、家屋などがその犠牲になったニュースを目にすると、建物の安全性の大切さが身に染みます。 今回は、水害から家族を守るための家の特徴について、お伝えしたいと思います。


 

【1】 多発する水害ではハザードマップ等を活用する

集中豪雨などで発生した水害を防止するためにどんなことができるでしょうか?

水害を避けるためにできること
1. 土地についての理解を深める
2. 古地図で調べる
3. 地盤情報を活用する

水害の場合には、河川や高低差など水の通り道が地形には存在しています。今は都市開発で宅地造成が進んでいたとしても、土地の歴史を紐解くとわかることがあります。その情報を調べる方法についてお伝えします。



1. 土地についての理解を深める
代表的なものは「ハザードマップ」になります。各行政庁がホームページ等で公開しており、大雨が発生した場合にどのエリアに水が入り込みやすいか、過去のデータを元に分析した結果が地図上に掲載されています。現状は住宅街であっても、昔は河川敷で田んぼだった、という土地も少なからず存在します。ハザードマップを見れば、水害に対しての危険度合いを色別に確認することが可能です。

2. 古地図で調べる
過去にその土地はどんな土地だったのかを、古地図(昔の地図)で確認することができます。昔から人が住んでいるような場所では比較的安全な場所と言えます。高度経済成長時に多くの開発事業によって生み出された街の中には、昔の人が避けていた場所も住宅地として開発されていることもあります。当然ですが、安全なように改良され住宅地に生まれ変わったのですが、最近の想定外の自然現象を目の当たりにすると、確実に安全とは言い切れないのではないかと思ってしまいます。また、その土地の特徴は地名となっていることも多いですので、「水」に関連する地名の場合には古地図の確認が必要です。例えば、東京都の「渋谷」も谷がつきますので、渋谷駅を中心にすり鉢状の地形となっています。

3. 地盤情報を活用する
地盤のゆるい場所は比較的水が多い傾向があります。水分を含んだ地盤は建物を建築する場合には、改良工事等が必要になることが多いのですが、豪雨の場合には、地盤に水が浸透しきれずに溢れてしまうケースもあり得ます。行政庁によっては、地盤情報を公開しているケースもあります。これを見ることで、その周辺の地盤の強さを確認することもでき、軟弱地盤なのか否かを知ることが可能です。簡易的に知る方法としては、道路上の電柱が斜めになっているのかどうかで判断する方法もありますが、あくまで目安程度とお考えください。

 

【2】 水害に備えた家づくりの基本4点

 国土交通省から、水害に備えた家づくりについての指針が発表されています。基本的な項目4点がありますので、それぞれお伝えします。

1. 土地をかさ上げする
2. 高床式にする
3. 建物の周囲を囲む
4. 水に強い外壁素材を使用する



1. 土地をかさ上げする方法
具体的には建物の地盤を上げる=盛土をします。道路よりも敷地が低い場合に盛り土は効果的な方法です。しかし、ただ土を入れるだけでは地盤の強度が極端に弱くなりますので、年月をかけて盛り土することで、しっかりとした地盤にすることが可能です。もともとの地盤が弱い場合には、盛土した土の重量が原因で地盤が沈下することもありますので、地盤調査は必須になります。具体的な土の重さは、1m四方(1㎥)では1.6tほどあります。コンクリートの場合は2.4tですので、それぞれかなりの重量があります。
盛土で配慮すべき点として、近隣との高低差についても確認が必要です。計画方法によっては、高低差が原因で近隣へ水が流れてトラブルになってしまうケースもあるため、慎重な検討が必要です。

2. 高床式にする方法
縄文時代の高床式倉庫と原理は同じです。床下の空間を多く取ることで、万が一水が流れ込んでも居室まで水が入り込まないようにします。具体的には、1階の基礎を高くする構造になります。その部分をガレージなどに活用するピロティ構造(*)も人気があります。構造的には基礎が高くなると、その基礎の強度を保つことがより必要になるため、耐震状の強度確認が必須になります。
*1階部分を柱などだけの空間として2階以上を居住スペースとする都市型住宅

3. 建物の周囲を囲む方法
道路や近隣から水が入り込まないように、ブロック塀等で囲うことにより水の侵入を防ぐ方法です。台風時に土のう袋で囲っているのをニュース等でご覧になったこともあるかと思いますが、玄関や門扉など、どうしても囲うことのできない部分は土のう袋でしのぐことも考えられます。

4. 水に強い外壁素材を使用する方法
水が敷地内に入り込み最初に触れる部分が建物の外周になるのですが、基礎や外壁が水に強いようになっていれば、被害を最小限に食い止められることに繋がります。建物の外壁で一般的なサイディングは水に強い外壁材で、大きなボードのつなぎ目をコーキングすることで隙間を埋めます。ポイントはそのコーキングが切れてしまわないように、定期的なメンテナンスが重要になってきます。高気密・高断熱の住宅などでは、いちど水が入り込むとなかなか排出できません。壁の中でカビ等が発生してしまう原因にもなりかねないため、基礎や外壁材は、水に強い素材を選び、定期的にメンテナンスすることをお勧めします。

 

【3】水災の場合に使える火災保険の加入を検討してみましょう

残念ながら水災の被害を受けてしまった場合には、台風被害と同様に被害者生活再建支援法という制度で地方自治体等より最大で300万円支給されることもあるようですが、火災保険等でカバーされることもありますので、併せてチェックすることをお勧めします。



水災によって補償される範囲が決まっているため、その点は良く確認するようにしましょう。一般的に水災とは、台風・暴風雨・豪雨などによる洪水や高潮、土砂崩れなどの自然災害によって、住宅や家財が損害を受けた場合に適応されます。想定されるケースとして、以下のようなものが考えられます。


1. 洪水被害で、住宅内の家電が使えなくなってしまった
2. 家が土砂災害の被害で流されてしまった
3. 道路が冠水して床上浸水してしまった

火災保険では、水災の補償条件と補償が受けられない場合についても理解しておきましょう。すべての損害が補償される訳ではなく、保険会社の商品によって違いはありますが、一般的に以下のような条件があります。

1. 床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水の場合
2. 再調達価額の30%以上の損害を受けた場合

上記の条件の場合、洪水で浸水しても床下浸水であれば、基本的に保険金は支払われないということになります。
また、発生の多い地震による津波や土砂崩れによる被害は、水に関わる自然災害ですが、地震が原因で起こるものに関しては、地震保険の対象となります。地震が原因の水害に備えるためには、火災保険とセットで地震保険も検討する必要があります。

今回は、水害から家族を守るための対策をお伝えしました。まずは、住まいの建つ土地について被害をけやすい立地なのか、確認することが重要です。その方法として以下3点をお知らせしました。

1. ハザードマップ等で土地情報を調べる
2. 古地図でその土地の成り立ちを確認する
3. 地盤情報を活用する

そして、その情報を元に水害から家族を守るための住まいを建築する場合のポイントは以下の4点です。

1. 盛り土等で土地をかさ上げする
2. 高床式の構造を検討する
3. 水が侵入しないよう囲む
4. 外壁など水に強い素材を使用する

今後、増加する気候変動から家族を守るためにも、水害に備えた家づくりがますます重要となってきます。ぜひ住宅展示場などで専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
※本文は、2020年7月23日時点の情報に基づいて作成しております。
 


監修・情報提供:金内 浩之 (一級建築士)
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