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【第38回】マイナス金利時代の賢い住宅ローンの借り方・返し方~住宅ローン減税で実質金利ゼロに?!~

マイナス金利導入後、住宅ローンの金利は下がり、住宅購入を有利に進めることができるようになりました。今回はマイナス金利と住宅ローン減税の関係を解説し、マイナス金利後の借入可能額についても解説します。

【1】マイナス金利で実質金利はゼロになる?

 住宅ローンを借りると住宅ローン減税を受けることができます。住宅ローン減税は当初10年間、毎年の年末のローン残高の1%分、所得税、住民税から減税できるという制度です。

 年末の住宅ローン残高の1%分の減税が受けられる一方、マイナス金利になった今、住宅ローンの金利は1%未満で借りられることも多くあります。例えば2016年5月現在、大手都市銀行の変動金利は0.625%となっています(最優遇金利の場合)。1%未満の金利でお金を借りておきながら、住宅ローン減税で1%分の減税が受けられるため、その分得をする場合もあります。住宅ローンの金利低下で「払う利息」より「受けられる減税額」の方が大きくなる場合、住宅ローン減税のある当初10年間は実質金利ゼロ以下になっている、と言えるでしょう。

【2】住宅ローン減税で得をするのはなぜ?

 年収500万円のAさんが3,000万円の住宅ローンを35年返済(元利均等返済)で借りるとします。このAさんの住宅ローン減税がいくらになるかを考えてみましょう。

【シミュレーションの仮定】

今年の年末の住宅ローン残高:2,920万円と仮定します。
  →最大で292,000円(2,920万円×1%)まで減税を受けることができます。
Aさんの税金:所得税は110,000円、住民税は220,000円と仮定します。

 Aさんの年末の住宅ローン残高は2,920万円なので、その1%にあたる292,000円まで減税を受けることができます。Aさんが支払った所得税は110,000円ですが、まずこの所得税全てが減税対象となります。Aさんが支払う住民税は220,000円ですが、住民税の最大減税額は136,500円までとなります。結果、Aさんが受けられる減税額は246,500(=110,000+136,500)円になります。

 一方、Aさんの住宅ローンの返済額のうち、今年1年の利息を合計すると185,300円となりました。Aさんが今年払う利息が185,300円なのに対し、住宅ローン減税はそれを上回る246,500円分受けることができます。このようにマイナス金利で金利が下がった今、住宅ローン減税のある当初10年間は「1年間に払う利息」より「その年に受けられる住宅ローン減税額」の方が大きくなるということが起こりえます。

 Aさんが住宅ローン減税を受けられる10年間の減税額とその年に払う利息を計算すると次のグラフのようになります。当初10年間は減税額の方が利息よりも大きくなり得をすることがわかります。

 ただし、この試算は金利が0.625%で変わらない前提で行っています。変動金利や5年固定金利等の場合金利が上昇すると返済額が増えてしまうリスクがあるので、金利種類の選択は慎重に行う必要があります。

【3】住マイナス金利で借入可能額が増える!

 マイナス金利に関連して、最後に住宅ローンの借入可能額について考えてみます。自分はどれくらいの金額まで住宅ローンを借りていいのか、気になる人も多いと思いますが、1つの目安として「借りても大丈夫な住宅ローンの金額は年収の5倍」まで、と言われることがあります。

これは、年収600万円の人が借りても大丈夫な住宅ローンの金額は、年収の5倍にあたる3,000万円まで、という目安です。しかしこの「年収の5倍」という目安はだいぶ昔に使われていたもので、マイナス金利で金利が下がった今、必ずしもこの目安どおりでなくても無理なく返すことができる場合があります。

例えば金利が4%の時代に年収600万円の人がその5倍の3,000万円の住宅ローンを借りるとした場合、金利4%、35年返済(元利均等返済)であれば毎月返済額は132,832円となります。金利が低くなった今、毎月132,000円の返済額になるように、借入金額を逆算してみると、4,300万円となります(ここでは金利を1.5%と仮定、返済期間35年の元利均等返済としています)。年収と比較すると7倍以上の借入金額ということになります。金利が下がった今、年収の5倍以上の住宅ローンを組んでも問題なく返せる場合もあるのです。

 今回示した計算はあくまで目安です。全ての人が年収の7倍まで借りても大丈夫ということではありません。無理なく返せる金額というのは人それぞれなので、ライフプランを踏まえ家計を分析して決定していく必要があります。ただしマイナス金利で住宅ローン金利も低くなった今、金利が高かった頃の格言(「年収の5倍まで」等)を基に予算を限定してしまうのはもったいない、ということは確かでしょう。

 

監修・情報提供:株式会社FPアルトゥル 代表取締役
ファイナンシャルプランナーCFP® 井上光章
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本記事はネクスト・アイズ(株)が記事提供しています。
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