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2016年3月 第4回 伝統とモダニズムを感じる方船の家

伝統的な切妻の形が木をメインとした外装建物ともあいまって木立ちにたたずむ姿は自然と融合している。

切妻で伝統性をいかす外観

 ケベック州はカナダの中でもフランスからの移民が多く住み、フランス語が第一の公用語として話されている特殊な地域である。文化的にもフランスの伝統的なものや古いものを愛する傾向と気風が残っている。その中心都市であるケベックは「北米のパリ」とも呼ばれている。そこから約2時間半のドライブで別荘地のような小さな町、ノース・ハットレイに着く。その木立ちの中にこの住宅は以前からそこにあったかのように立っている。
 設計したのはケベックをベースとする設計事務所、ブルジョワ・ルシャスール・アーキテクツ。施主からは「家らしい家」を設計してほしいという依頼を受けた。

陸にあがった船のような家

横のデッキにリビングの延長のように凸出した部分はテーブルを置いて使うことも想定したゆとりの空間。

 施主は最初、北米東海岸の海辺に立つような葺き屋根の伝統的なスタイルの住宅を希望していたという。「嵐に抗うような灯台の下の小屋」のようなイメージである。と同時に、モダン住宅のもつ開放性も期待されており、この区域の近隣の家との違和感のないようなものを設計しようと「伝統とモダニズムの二重性」をテーマに建築家はアイディアを練った。敷地は山裾にあり、周囲の木々の葉の茂みと静かな水の流れの音が印象的なひっそりした場所。時折鹿も訪れていたが、町の中心にもアクセスが良く、蛇行する道路が近くを走っている。
 住宅はあまり存在を誇示しないように伝統性の基準を意識して、まるで丘に上がった大きな木の方舟のように建てられた。中心となる居室は周囲の林に対して融合され、その上の階層は浮遊感をもたせている。

モダニズムをアクセントに伝統を生かす

サッシを開放すればデッキに出て外を体感することができる。夜は内部の光が外にもれて温かみを見せる。

上階も階段吹き抜けからの採光と窓で明るい。
天井と床の木と壁面の白がすっきりしたコントランストとなる。

 一階はほとんどワンルームとしてつくられており、横のデッキにリビングの延長のように凸出した部分はテーブルを置いて使うことも想定したゆとりの空間だ。屋根は亜鉛で覆われ、外壁は杉材でサイディングをしているが、これは近隣に古くからある典型的な住宅の手法をそのまま受け継いだかたちだ。しかし、船を連想する細長く流れるような全体の形状はあくまでもモダン住宅のデザインであり、湖からのほど近い立地であるというコンテクストから生み出されたものである。二階が覆いのようにポーチやテラスを庇護し、ガラス張りの一階メイン部分を夏の暑さからも守っている。内装は、天井と床の木と、壁面の白が温かみを演出している。

全面ガラス張りの開口からの光で昼間は照明を必要としない。
アイランドキッチンのまわりに人が集まる。

バスタブの手前にシャワースペースを配している。
入浴しながら窓の外の自然を楽しむことができる。

 リビングは林に対して横長に伸びて風景を大きく取り込み、一階奥の壁は黒にして、他の部分の茶や白との対比をつけ、全体のモノトーンのカラースキームとして印象的になっている。同様に窓枠には暗色を使って、内部では白い壁とまた外部では長いファサードの連続に対してのアクセントとなるようにしている。それぞれの寝室や風呂場からも周囲の眺めを楽しめるようになっており、内部は機能的ですっきりしている。
 モダン住宅といえば白いコンクリート、ガラス、スチールからなり、やや冷たい印象の外観のものになりがちかもしれない。しかし、デザイン次第ではモダンの解釈や見せ方にも色々な工夫ができる。また立地というコンテクストに沿うことで周囲と違和感を出すことなく希望の住宅をつくることもできるだろう。まずは、展示場にある住宅やさまざまな情報に触れてみて、想像の中の住宅をより具体的に肉付けしていくことも大事である。

1Fはリビング、ダイニング、キッチン。向かって左側がデッキ。

KL House, North Hatley, QC J0B, Canada
Source:http://www.archdaily.com/778567/kl-house-bourgeois-lechasseur-architectes
Architect:Bourgeois / Lechasseur architectes(http://bourgeoislechasseur.com
Photos:Adrien Williams
Japanese original Text:Masaaki Takahashi