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2016年9月 第7回 過去と現在が交差する伝統モダンの家

左が「サランチェ(書斎・ゲストハウス)」で右が「アンチェ」と呼ばれる母屋。

奇岩の山裾野の敷地で

 韓国。江原道(カンウォント)、束草(ソクチョ)市の郊外で最も古い町の一つ、トムンドン(道門洞)にこの住宅はある。トムンドンは切り立った岩の奇景で知られる観光地、雪岳山(ソラクサン)の登山口に当たる町である。この山はまた仏僧の修行の地としても昔から知られている。
 山を借景とする敷地の角にはすでに古い民家がポツンと立っていた。施主は、当初古民家を取り壊して駐車場にした上で新築をするつもりだったというが、結果として、古い家屋は保存され、新築二棟が建てられ、三棟の建物が山にならうように軒を連ねている。

古民家と家の守り神

側面から見た母屋は伝統的な韓国の住宅。ガラス戸は二重になっている。格子模様が伝統のパターンである。

 新旧二つの家がここにあるのには不思議な物語がある。まず、この町の名前、道門洞(トムンドン)だが、悟りを開いた時のありがたい光へ通じる門という意味がある。そんな土地柄である。また、韓国の古い家は、家の略歴を書いた板を大梁の上に載せる慣習になっているが、この古民家を取り壊そうと調査した際、どこを探しても、それらしい履歴が見つからなかった。家の様式も木だけでなく漆喰が使われ、重継手があり、周辺の家とは様々な点で異なっていた。たまたま通りかかった人がこの家の事情を知っていて、それによれば、この家は、もとは雪岳山の蔚山岩という険しい岩場の近くにあった僧の修行の家で、ここに移築されたものだという。その夜、施主は夢を見た。夢は道門洞の神と雪岳山の神のふたりが家についており、仲が良くないことを教えてくれた。道門洞の神が現れ、古民家を絶対に壊さずにいてくれるなら、この家から出て行くと告げた。大工である施主は、この夢があまりに鮮明だったので、夢のお告げに従うことにしたのだ。

手前が敷地内にあった古民家。当初とり壊す予定だったが、数奇な経緯から保存することに。

伝統とモダンとゲニウス・ロキ

 施主が夢を見た時、古民家は半ば改装されつつあったが、工事はそこまでとして、二つの神の霊を祀った壺を新旧二棟に分けて祀った。
 建築家は言う、「家の守り神は韓国ではソンジュンシン(城主神)という。そういうものが実在するのか我々には分からないが、家を建てることや土地と出会うことは単なる偶然のことではないと思う。それは驚くべき関係性の糸でつながっている」。建築家は、この間の事情を全て施主から聞き、これを理解して仕事に当たった。
 家は二棟に分かれ、いずれも南向きに配して太陽光を取り入れるようにした。

「サランチェ(書斎・ゲストハウス)」は下がリビングで上が屋根裏。総木張りで温かみがあるシンプルな多機能空間となっている。

「アンチェ(母屋)」はダイニングやいくつかの部屋に分かれ、生活スペースに。

 一棟は「アンチェ(母屋)」で厨房と部屋がいくつかあり、もう一つはゲストハウスとしての「サランチェ(書斎棟の意味もある)」でリビング兼音楽室と屋根裏がある。そうして三つの家が地面から山並みのように立ち上がるイメージで配置されている。新しい二棟は、外見としては、まさに今時の「イエガタ」のモダン住宅であり窓の配置などにもそれはうかがえるフラットでシンプルな住宅であり、伝統住宅の開放性と建具のクラシックな意匠を受け継ぎ、シックで落ち着いた内装になっている。

母屋のキッチンは広くて使いやすい。古い木材と白い漆喰壁面がすっきりして心地良い。ナチュラル・モダン。

 キッチンはタイル張り。収納はグレーで木や漆喰と調和し、大きな真紅の冷蔵庫がアクセントとして効いている。残された古民家のテイストも受け継いでいるのがわかる。土地の地霊をゲニウス・ロキとも言うが、この家はそれを随所に感じるモダン住宅である。

 家を建てる時は、土地や家族のことをよく考え直すきっかけにもなる。住宅展示場に行く時には、家族みんなで出かけたい。会場で、また家に帰ってからお互いの家のアイディアを交換するのは楽しい時間だ。

Aleph in Domoon Source:http://www.archdaily.com/office/studio-gaon
Architect:Hyoungnam Lim, Eunjoo Roh in studio_GAON
(http://www.studio-gaon.com)
Location: Sokcho-si, Gangwon-do, South Korea
Photos:Yong Kwan Kim
Japanese original Text;Masaaki Takahashi

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