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2018年5月 第17回 インテリアに庭を持つ豪邸

公園とビーチに隣接する好立地を生かし、一階は開放的に、二階は特別なメッシュでプライバシーを保護している。

入江に立つ豪邸

 シドニーは人口500万人超える、オーストラリア最大の世界都市である。入江に発達した港湾があり、中心部からわずか30分の圏内に大小様々なビーチが広がり、マリンスポーツも楽しめるリゾート地となっている。湾をクルーズしてみると、あちこちに素敵なデザインの住宅が点在していることに気がつく。映画のロケにも、この辺りの豪邸が使われていたことを思い出させる。

 この家は、そんなシドニーの天然の大きな入り江にあり、北向きの立地にある。遊技場も併設する公園に接しており、湾に長く伸びる埠頭もある。こうした立地の景観は、住宅の建て方にも影響している。

 建物の裏手には人の手が加わっていない自然のビーチがあるので、これを一つの軸として踏まえ、プライバシーをどう守るか、外部に対してどう開放するかを考慮された造りとなっている。

出展:google map

特殊なメッシュで覆われたファサード

公園側から見た正面ファサード。二階は、レイヤーを重ねる構成で、視線を遮る特殊なメッシュを張っている。

 公園側の立面を見ると、たくさんの面が立体的に錯綜しているのが分かる。これは豊かな空間を使ったデザインの遊びであり、外から直線的なデザインに見られないための工夫でもあるのだ。グレーの帆のようなスクリーンが大きく張られているが、これは、お隣の国のニュージーランドの建築用金網のメーカー、ケインマイレ社の開発したポリカーボネート製の特別の網を使った意匠である。同社建築用の網は海外の人気映画『ロード・オブ・ザ・リング』の中で騎士の甲冑に使う鎖帷子としても使用されているという。このメッシュがまるで船に張られた帆のように外への面を覆って、前面道路側からの視線を遮っている。

 木組み部分と広い石膏壁、また、階段下や梁や張り出し窓(ベイ・ウインドウ)などの下端とその周りなどのデザインは、帆様のスクリーンを突き抜けてさらなる別の面を構成している。こうした構成の面白さが建物に奥行きを与え、線状の意匠を重ねた絵画的なファサードを生み出す一方で、公園側から取り込む光の量と外部眺望を最大限にしている。

ホテルや高級レストランを思わせるユニークなアプローチ

玄関のアプローチを内部から見返す。階段まわりのガラスの吹き抜けと周辺に配した植物が内外を融合する。

 家へのアプローチは公園側からは直角に建物に入ることができ、玄関に続く通路の床面は、母屋の入り口にかけて穏やかな勾配をつけることで期待感を演出。こうすることで特別な居住感を感じさせる。この通路横の階段吹き抜け側の床面には水路まで設けているのも贅沢なしつらえだ。その周囲には植物を配して、日本で言うなら坪庭のような内部ガーデンを構成している。

二方向に開放した快適な一階

左一階,右二階 一階は、くつろぎのエリアが複数あり、無駄がなく、しかも贅沢に空間を使ってホテルを思わせるようなレイアウト。
二階には四つの水廻り付きベッドルーム、書斎、共用リビングがあるが、どの部屋にも自然光がよく入る造りになっている。

一階の内部ガーデンから見るとダイニングの先に湾が見え、開放的で光が家中に取り込まれる。

二階は複数のユニットに仕切られたホテルのような造りで、ゲストルームでは、シドニー市街が望める。

 一階を、上から俯瞰してみると、左にはトイレと小リビング。右に行けば、メインの広いリビングダイニングで、ラウンジ的にも使えるエリアが四つもある豪華さだ。左右二つのエリアが玄関と内部ガーデンのスペースを挟んで振り分けられているのだ。内部ガーデンを設計者は「内部のハーバー(港)」と名付けているが、いわゆる「光庭」であり、外部の光と風景を建物の中に取り込んでいる。

 庭側から見ると、上層の巨大な白く何もない壁が存在感を放ち、一階のガラス張り部分とあいまって軽さを出している。さらに、その下の眺めを一層、際立たせている。二階は小分けにされ、ゲストルームとして快適に過ごせそうな宿泊施設を思わせる。

プール側からの一階全景。ベージュを基調に白、グレー、茶という色彩パレットが美しい。

 湾に面した棟はとりわけオープン空間になっており、リビング横にある細長いプールの水面と建物の床面の落差が少ないことが注目される。こうすることで間近にあるビーチの海にも繋がっているようなイメージとなり、水平面から見ても建物の全体が内外に融合している印象を与える。公園側とビーチ側のどちらもが繋がったところに屋根をかけ、家にしているような意識で設計されている。

リッチに配慮した素材

一階のキッチンとダイニング。光が四方から入り、明るくこだわりのインテリアが美しい。

 インテリア素材の点からも、十分に考えられた適材が選ばれている。素材や装飾をソフト感とハード感でミックスし、木のナチュラルカラーや、白い壁は洗練され、これらは海辺であることを意識したもの。打放しのコンクリートはアクセント的に使っているので、冷たさは感じさせない。また、大きめの絵がインパクトを与え、フォーカルポイントとなっている。豪邸だが、ゴージャスさを前面に出すよりも、立地を考え、透明感と抜け感を強調する構成と素材によって、すべての良さを十分に表している邸宅である。

 豪邸というものは、大概、建築家によって設計されるが、ハウスメーカーの住宅も今や多くのオプションを持ち、多様な素材や意匠を可能にしている。住宅展示場に行ってハイエンドな住宅の贅のこらし方を考えるのも楽しいだろう。ぜひ、足を運んでみて欲しい。

Double Bay
Location: Sydney, Australia
Source: https://www.archdaily.com/892113/double-bay-saota
Architect :SAOTA, Philip Olmesdahl, Erin Gibbs, Duke Williams
http://www.saota.com
Photographs:Adam Letch
Japanese original Text:Masaaki Takahashi