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2019年5月 第23回 黄色が印象的なプレハブ工法の個性派住宅

ビジャリカ湖を望める傾斜地、自然の生い茂る環境に黄色の外観が目を引く

湖を臨むリゾート地の黄色い家

 南米といえば、ブラジルやアルゼンチンは観光地として知られているが、それ以外の国となると日本には馴染みがないかも知れない。しかし、少し調べてみれば、知られざる絶景や素晴らしい観光資源が豊富にあることがわかる。
 今回紹介する住宅があるのは、その南米大陸で細長く南北に伸びる国、チリの南部にあるプコンという都市にある。首都サンティアゴから約650キロ。近くにある火山、ビジャリカ山一帯は自然公園ともなっており、一年を通してリゾート地として人気が高い。過去2世紀に渡るヨーロッパからの移民がこの風景に魅せられ開発を進めた。ビジャリカ山の周辺には湖や温泉もあり、頂きに雪を冠した姿はまるで富士山を思わせ、その風景はどこか日本を連想させる。住宅はビジャリカ湖に臨む傾斜地の上にあり、木立ちの中に建つ黄色い外観が目を引く。毎年人口が2%ほど増加していることから、良好な住環境であることが伺える。

出展:google map

プレハブ工法の合理性にデザイン性をプラス

プレハブ工法というシンプルさが周辺環境に溶け込みながら、個性を感じるデザイン性も重視した黄色の家

 設計者が目指したのは自然の光や音が感じられ、周辺環境に溶け込んだ快適でサステナブル(持続的)な空間である。「この環境で建物をつくるには二つの大きなチャレンジがありました。一つは自然の静謐(せいひつ)を乱さないこと。もう一つは、快適な空間を求めているので、それに早急に応えなくてはならないということでした。」と設計者は言う。そこでプレハブ工法を選び、さらにデザインの面でそれを補完する方法を選んだ。これによってデザインを調整していけば、コストや工期の短縮も可能だと考えたのである。もちろん、持続して量産することだけを目指していたのではなく、施主に応じたカスタマイズも可能とした。

黄色という外壁が、施主の想いや設計者のこだわりを強く感じる温かみのある家となった

 ちなみに、この住宅は今「黄色い家」と呼ばれているが、そこにいたるまでの変遷があったという。冬になると周囲の木々が雪や氷で銀色に見えるところから「シルバーハウス」と呼んでいたこともある。最終的に黄色という強い色で外装を仕上げることが決まり、「黄色い家」に落ち着いた頃にはプレハブでシンプルな形の家とはいえ、ヒューマンタッチ(人間的な情緒)の感じられる家になっていた。

3つのサイズのユニットを組み合わせ、傾斜地を活かした高低差もポイント

 家にはスラブパネルが使われ、122×244センチ、122×366 センチ、122×488 センチのユニットを組み合わせて室内空間をつくり上げている。壁の高さも244センチが基本。ルーフ(屋根)もユニットと同様のサイズを選び、シンプルな構成でまとめている。

外壁はコルゲート(波型)鋼板で覆われ、構造にあたる最小限の木で建物を支えている
傾斜をアプローチとして、テラスなども配置し室内空間の一部として活用
家を挟んで反対側にもデッキを設け、
少しのスペースを有効活用している

 全体はコルゲート(波型)鋼板で覆われ、建物自体の構造は最小限の木に支えられている。傾斜地の特性を生かして、下方から階段を登ってくるアプローチも特徴的。階段の途中にはテラスを設け、そこでくつろぐことも可能だ。そのテラスは、外で過ごせる季節になれば部屋の一部としても使える憩いの場となる。階段アプローチから更に上り、家を挟んで反対側の傾斜地にもデッキを設け開放感を演出している。

壁の一部を開口とするスリットタイプを使い、望む景色を楽しむ
リビングは開口部が四方に広がり、
右側のフルハイト(大開口)からは湖を臨むことができる
四角いユニットのいたる所に隙間を持たせたつくりであることが上空から伺える
ユニットの隙間から周辺の自然が覗く。
まるで中庭のような空間

 日本でも見かけそうな別荘風の小規模な住宅といえるが、様々な工夫によってデザインセンスの高い住宅となっている。例えば、壁の一部を開口とするスリットタイプと、床から天井まで壁一面を開口とするフルハイトな2種類を使い分け、見える景観にメリハリを生んでいる。また、四角いユニットの間にところどころ隙間を設け、間の空間を中庭のように取り込んでいるのも特徴的。こうした変化を持たせることによって、四角く単調になりがちな全体をデザイン性のある空間に仕上げている。

外の黄色がインテリアと空間のアクセントに

茶色と黒のわずか二色だけを基本とし、
開口から見える外壁の黄色が
アクセントカラーとして映える
茶色と黒の二色が場所によって床や壁・天井と入れかわる
色彩計画でまとまりある空間を実現した

 室内空間に使われている色は、構造の木の茶色、それを塗装した黒のわずか二色だけである。これが場所によっては床、壁、天井と入れかるわけだが、ポイントとして開口から見える外壁の強い黄色がときおり垣間見えるので、三番目の隠されたアクセントとなっている。これに合わせるようにインテリアも茶系と黒系のものをメインに選んでおり、カラースキーム(色彩計画)としてしっかりとまとまって見えるよう計画されている。

薪ストーブも同系色の黒を選ぶことで、LDKの中央を印象的に飾るインテリアの1つ

 暖房の薪ストーブは黒で、壁と同系色であるところから、空間に溶け込みLDKを印象づけるインテリアとなっている。真ん中に暖炉を配置するという大胆な空間も色の効果が大きいだろう。

黒を床と壁に使うことで、奥行きが広く感じられる効果が期待できる
吹き抜けの照明は大振りなものを選び
印象的な空間を演出

 黒という色は境界を曖昧にする効果が期待できる。この家もその効果を最大限に利用しているようだ。例えば写真15のように、床と壁を同じ黒で統一すれば奥行きが生まれたように見える。また、天井に黒を使うことで高く見えるというメリットも期待できる。
照明は階段の吹き抜け以外はおおむね小振りでインダストリアル(機能的)なデザインのものを選んでいる。

 今回紹介した黄色い家はシンプルで合理的なプレハブ工法でありながら、空間の構成やレイアウト、塗装でユニークなものに仕上がっている。工費も工期も節約できるし、量産も可能。しかし、デザインにこだわることで付加価値が生まれる。
今のハウスメーカーの家もよく知らない人から見れば、スタンダード(標準化)で型にはまったものに見えるかもしれないが、実はそれぞれにカスタマイズすることが可能になっており、施主のデザイン志向にも柔軟に対応する幅がある。そんな個性を出すことができる、ハウスメーカーの家を見学しに、ぜひ展示場へ足を運んでみたい。

Source: https://www.archdaily.com/914059/yellow-house-alejandro-soffia?ad_medium=gallery
Title: Yellow House
Architects Alejandro Soffia
Site: http://www.alejandrosoffia.cl
Location: Pucón, Chile
Area:100.0m2
Project Year :2019
Photographs: Juan Durán Sierralta, Mathias Jacobs
Japanese original text: Masaaki Takahashi

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