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住まいの知識世界のモダンハウス

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2018年3月 第16回 北欧建築の自然をふまえた堅牢なモダン住宅

背後を森に囲まれた敷地。夏は海水浴、冬はウィンタースポーツでたくさんの観光客が訪れる場所。

サマーハウス建て替え計画

 スウェーデンのほぼ中央にあるイェヴレボリ県は大半が森林に覆われている。そのバルト海に面する入り江の奥深くに位置する街、セーデルハムンは、製鉄業や林業、製糸業で知られる静かな町だ。観光スポットでは、19世紀に建てられた街を見下ろす灯台のような国王記念塔のオスカーボルグとF15戦闘機のコレクションで知られるF15航空博物館がある。

 この住宅は、森と海に挟まれた険しい湾の崖の東岸にサマーハウスとして建てられ、西に面している。付近には海岸線に沿って数多くのサマーハウスが点在しており、それぞれは一様に家の裏手から入るような建て方になっている。入り江は、夏ともなるとたくさんの人が訪れ、海水浴をしたり、釣りを楽しんだり、また冬なら氷上でスケートなどウィンタースポーツをする場所。賑やかさが伝わってくるのだという。

 もともと、この場所にあった家は、キャビンのサマーハウスで、短期間の滞在を目的にして1950年代に建てられた小さな家だった。インフラも非常に簡素なもので、冬季は水が使えず、釣りやスケートの後は、最小限の暖が取れれば十分という不便なものだった。家の所有者は、四季を通して暮らせ、周囲の湾と森がつくりだす素晴らしい景観を楽しめる家を望んでいた。

出展:google map

暖炉をフォーカル・ポイントに

北欧の住宅らしく、白木をメインにした木造に白塗装の暖炉。天井は落とさずに、抜いて開放感を出している。

 施主一家の希望する住宅は、外部に開かれており、人々のコミュニケーションがとりやすく、それでいて将来もずっと家族ひとりひとりのプライバシーがきちんと守れる家だったと建築家、ティナ・バーグマンは言う。

 建て替えられた新しい家は、勾配のついた屋根が載った細長いつくりとなっており、まるで森と海をつないでいるかのように配されている。その形状と配置は全室に周囲の素晴らしい景観を取り込むことが計算されている。しかも、プライバシーを守り、ここを見下ろす位置にある隣家から中を覗かれない工夫が求められた。

既存の石の土台にコンクリートのスラブを打ち、
石の基礎にそのまま木の壁をたてている。側面に小さな窓がある。

森側から見る。屋外活動を考えて広く敷地を開けている。
ファサードはシリコン加工した強固なパイン材。

 また、既存の石の基礎を活かして、その上に直接新しい壁が立てられている。この石壁は、そのまま延長されて海を見下ろすテラスへとつながっており、内部空間とも絶妙な連続感で通じている。海側は斜面に間近に接しているが、森側は、スペースを広く取って、イベントや屋外での活動をしやすいように自由度を高めている。

ゆったりとしたレイアウトで視覚的な抜け感があり、仕切られてはいるが開放感がある。

 住宅と周囲の自然環境とは、ゆったりとしたレイアウトによって視覚的にまっすぐな抜け感があり、構造的な無理もない。中央にあるリビングは、オープンで動線も滑らかになっており、背後の主寝室へとスムーズに連続している。そして他の2寝室は反対側の端に配置されている。

細長い平面で、両端に寝室を配して、
それぞれのプライバシーを確保。
間はリビングダイニングでワンルーム。

暖炉の背後、ダイニングの側から子供の寝室方向を見る。
窓側が通路としてまっすぐに抜けて気持ち良い。

 狭いフロア面積をフル活用し、無駄のない空間構成で開く場所と閉じる場所が重ならないよう明快に組み合わせ、内部空間の家族の視線をうまくコントロールしている。その視線の誘導によって、家の内部は実際よりも広く感じられるのだと建築家は言う。さらに、リビング空間とダイニング空間の間に置かれた暖炉。これがソリッドな壁で囲われていないために、広く抜けた空間に立って、インテリアのいわゆる「フォーカル・ポイント」となり、家全体にゆとりを感じさせる効果も生み出しているのも注目される。

 開放感のある内部空間で、室内にいながらアウトドア感覚を味わうことができ、伝統的なノルディックスタイル(北欧調)の雰囲気がうまく統合されている住宅といえるだろう。

厳しい自然環境を生き抜くための家

海側から家を見上げる。桟橋にはボートを停めることを想定している。潮風と積雪に耐える工夫が随所に。

 北欧の家は、日本人からロマンティックな憧れの対象として見られることも少なくないだろうが、厳しい自然との対峙からうまれた部分が多い。風光明媚なバルト海に面しているが、それなりに海と山の耐候性をしっかりと備えていなくてはならない。

海側のテラスから見る。大きなガラス面で解放的。
屋根はガルバリウム鋼板を張り、積雪を配慮して傾斜。

 屋根は、ガルバリウム鋼板で覆われ、その急勾配は、積雪の負荷を少しでも軽くするためのものであるし、強風と海水からのダメージを避けるために庇も伸ばしている。建材として、現地の厳しい自然環境をうかがわせる木材が使われている。

 基礎部分は、コンクリート・スラブを使い、ファサードはシリコン皮膜したパイン材で覆われ、森側もセメントベースで強化されている。ティンバーでの木造に接着合板も使用。建設まで7ヶ月を要した。

 日本は四季の変化がある豊かな自然に恵まれた国だが、北海道から沖縄まで気候はさまざま、風土も随分と異なる。それぞれの自然環境にふさわしい家づくりが必要である。近年は、厳冬からも暖房への関心は高まっており、暖炉も人気がある。そうした季節のしつらえは、どうしたらいいか、モデルハウスで空間を体験しながら考えてみてはどうだろうか。

Hus Nilsson
Location: Söderhamn, Sweden
Source: https://www.archdaily.com/887598/hus-nilsson-tina-bergman-architect
Architect :Tina Bergman Architect
http://www.tinabergman.com/husnilsson/
Photographs:Peter Guthrie
Japanese original Text:Masaaki Takahashi