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【第102回】 後悔から学ぶ「完全分離型二世帯住宅」の極意

2015年1月1日に相続税が大幅に改定されました。今までであれば相続税が掛からなかった方でも、課税の対象となるケースが増えています。そこで注目されているのが「二世帯住宅」です。相続税のルール変更をうまく活用しつつも、それぞれの世帯が適切な距離感で生活し、困ったときには協力し合えるような住まいにするにはどうしたら良いでしょうか?
実は私の自宅も義理の両親と同居する「二世帯住宅」です。日常生活での体験談や、設計者としての事例をご紹介しつつ、二世帯住宅成功の極意をお伝えします。

【1】二世帯住宅で注目の「完全分離型二世帯住宅」

完全分離型の二世帯住宅とは、それぞれの世帯が暮らす空間が完全に独立している二世帯住宅をいいます。玄関から水回り、リビングなど個室以外もすべて別々になっている住宅です。
なぜ、「完全分離型二世帯住宅」が注目されているのでしょうか?そのポイントは大きく以下の2つです。

ポイント1    完全分離型でも相続上同居扱いになる
ポイント2 「小規模宅地等の特例」により評価額が最大80%減


まず、相続税が改正される前は、同居親族として控除を受けるためには、それぞれの世帯が建物内で行き来できる必要がありました。しかし改正後では、同じ建物内での同居であれば必ずしも行き来できなくても、同居扱いとしてみなされるようになりました。

その効果として、特定居住用宅地等の「小規模宅地等の特例」が適用され、相続税の評価額が最大80%減額になるだけではなく、今までは二世帯住宅に対してネガティブに感じていた方も、お互いの世帯が明確に分かれた住まいにすることで、プライバシーも確保された二世帯住宅とすることが可能になりました。

相続税法上は同居住宅でありながら、お互いに干渉せず、物理上同居はしていない。そんな二世帯住宅のカタチが「完全分離型」と呼ばれ、近年注目を集めているのです。

【2】完全分離型二世帯住宅での失敗例

ここでは、完全分離型の「間取り」「建物性能」に関する失敗例をいくつかご紹介します。


【間取りの失敗例】
・玄関が隣り合わせ
完全分離型の二世帯住宅の場合には、玄関もそれぞれ独立して設置することになります。しかし、玄関ドアが横並びにレイアウトされた場合には、玄関でご近所さんと立ち話する時などに、お互いの世帯が気になり遠慮する可能性があります。
間取りのスペース上、仕方のない場合もありますが、気兼ねなく玄関を使えるように、設置面をずらすなど何らかの工夫が必要です。

・子世帯のリビングの真下に親世帯の寝室
世代が変われば、生活リズムも変わってきます。朝型・夜型など人それぞれですが、夜型タイプの子世帯のリビングの下に朝型タイプの親世帯の寝室がある場合には、上階から足音などが気になります。
部屋の配置を考える前に、お互いのライフスタイルを振り返ることでトラブルを未然に防ぐことが可能です。

・収納が少なすぎる
完全分離型の場合には、必要な住宅設備もそれぞれ二世帯分必要になります。そのうえ、広いリビングや、家族分の部屋数を確保したりなど、ついつい収納スペースを削りがちです。
必要な収納スペースがないと部屋に物があふれてしまい、逆に雑然としてしまうこともありますので、まずは自宅の収納スペースの棚卸を行い、必要なスペースを確認してみましょう。

・物干しの位置が不満
親世帯からの不満でありがちなのが物干しスペースについてです。例えば、1階が親世帯スペースとなり、日当たりのよい2階に干せなくなってしまったパターンをよく耳にします。そういった場合には、上下で世帯を分けるのではなく、左右の縦割りで分離する方法もありますので、日頃の物干しのルーティーンを事前に確認してみましょう。

【建物の性能上の失敗例】
・建物内部の遮音性能が低い
トイレやお風呂などの排水音が寝室に伝わって、夜中に目が覚めてしまう。ペーパーホルダーの音が気になるなど、生活リズムが違う年代同士が暮らすため、内部の壁や床の遮音性能について配慮することが大切です。

上記であげた以外にも、様々な失敗例があります。まずは、計画段階で各世帯の生活スタイルをよく確認することからはじめましょう。

【3】成功する二世帯住宅のポイント

ここでは、二世帯住宅を成功させるためのポイントとして、大きく3つをご紹介します。


【1.「建設地」「建設費」を誰が負担するのか、イーブン(公平)となるように計画】
具体的な間取りの計画に入る前に、両世帯とも公平になるような計画が望ましいです。 何をもって公平とするかについては、ご家族それぞれの状況があるので一概には決められませんが、具体的には「建設地」や「建設費」を誰が負担するかでおおよそ決まるかと思います。その上で部屋のスペースの配分であったり、部屋のレイアウトについて計画するのがよろしいかと思います。

【2.親族と同居する方が中心に、家族全員の意見を取り入れる】
実際に住まいを計画する過程で、設計士さんへ希望の住まいについて要望を伝える必要があります。その時に、ある特定の家族(例えばお父さん)が一方的に話を進めてしまうことも。一緒に住む同居家族(例えばお嫁さん)にとってみたら、本当の気持ちをなかなか言えずに計画が進んでしまうこともあります。ここは、親族と同居する方(このケースでいえば息子さん)が全体の舵取り役として、同居する家族全員の意見をまとめることが秘訣です。
ポイントは、家族会議では言いたいことも言えませんので、後で個別に確認していくことをお勧めします。

【3.少なからずある共有部分のルールを決める】
生活する上でのルールを決めておくことも間取りを考える上でお勧めします。完全分離型の二世帯住宅とはいえ、共有部分は少なからずあるものです。例えば、外回りの手入れがその一例です。日々の手入れ作業をどうするか、分担を決めておくことが望ましいです。何か問題が発生してから解決しようとしても、ネガティブな気持ちが後々残ってしまう可能性がありますので注意が必要です。
事前に決めておいた方がよさそうなポイントとしては、「外回りの掃除などの家事」「光熱費・通信費の負担(ネットやケーブルテレビなど」「税金(固定資産税)」「修繕費 (将来のメンテナンス費用)」これらがあります。
私自身の体験にはなりますが、二世帯住宅で暮らし約20年経ちました。日々の生活の中でよかった点はこんなことです。

1. コロナ禍のような状況でも、日々お互いの健康状態を確認できる
2. 家族のケガや、病気などの時に、体力的にも精神的にも支えあえる
3. 家族の誰かが家にいる安心感(宅配などで不在連絡票が入ることが少ない)


少子高齢化が進む今の社会において、身近にいる家族の存在が重要になってします。家族間のストレスを軽減することで、家族が積極的に助け合えるような関係になれば、これほど心強いものはないかと思います。「親しき中にも礼儀あり」という気持ちで計画を進めていただければ、きっと皆さまにとって最高の二世帯住宅が建築できるかと思います。

そして実際の部屋の広さの感覚や設備の使い勝手などは、実物を確認することでより具体的なイメージをご家族内で共有できると思いますので、住宅展示場のモデルハウス等で専門家のアドバイスを受けてみることをお勧めします。

 

 


監修・情報提供:金内 浩之 (一級建築士)
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