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家づくり最新コラム

【第110回】2022年度版 初めてでも失敗しない土地購入のポイント

そろそろマイホームを建てたいと思い始めた貴方、まず必要になるのが建物を建てる土地の確保ですね。実家の敷地の一部を借りたり、もともと相続した土地を持っていたりする方もいらっしゃいますが、ほとんどの方はマイホームの為の土地購入からスタートです。「不動産」と言う名の通り、一度買ったら洋服や車のように簡単に着替えたり、移動したりできるものではありませんし、高額なものですので安易に決めるのも危険です。しかし、「土地探し」を過度に難しく思う必要はありません。気を付けるポイントを押さえておく事で、希望するマイホームの舞台にふさわしい土地を取得する事ができます。


<INDEX>

【1】土地購入の為の資金計画
①土地購入融資と住宅ローン
②優遇策の活用

【2】建物から考える土地の探し方
①土地探しで知っておきたい基礎知識と注意点
②敷地の特徴を活かす家づくりのポイント

【3】土地建物にかかる経費

【4】おわりに


 

【1】土地購入の為の資金計画

 

土地取得の為の予算を考えるにあたって、後になって肝心な目的である建物計画で頓挫、という事にならないよう、また、借入れの返済が負担にならないように、家族の生涯のライフプランをたててみましょう。

土地の購入で何故ライフプランまで?と思われるかも知れませんね。
例えば、土地購入の為だけの住宅ローンというのはありませんので、取り敢えず土地を買うために貯 蓄をはたいたとしましょう。その後、住宅建物の建設には住宅ローンを組んだとします。その先数十年の間には、家族の人生の過程で教育費がかさんだり、不測の出費もあるかも知れません。加えて住宅ローンの返済となると負担は大きくなり、貯蓄の備えも無いとなると結果的に生活の質が下がってしまいます。

また、土地を買ってはみたものの先の見通しがたたなくなって更地のまま放置しておくと、課税評価額が高くなり、固定資産税、都市計画税といった税金の負担も無視できません。前述の教育費についてですが、近年の統計によりますと子供一人当たり平均で、幼稚園から大学までずっと国公立の場合で約1,000万円、ずっと私立の場合は大学で約2,400万円かかると言われています。別途塾代等も考えると家づくりと共にしっかり考えておく必要がある事が判ります。
(参考:文部科学省

ここまで考えると「うーん、マイホームは難しい?」と思った方もいらっしゃるかも知れませんが、諦める必要はありません。前もって戦略を練る事が大切なのです。
 

①土地購入融資と住宅ローン
土地を購入する際に利用できる融資には、主に「つなぎ融資」と「土地先行融資」があります。
そもそも家を建てる為の土地ですから、希望する住宅がきちんと建てられる事を確認し、建築計画を具体的にした上で土地を購入するのが安心です。
気になる土地がみつかったら、遠慮せず住宅メーカーに建物プランを相談してみましょう。資金計画の面でもアドバイスを受ける事ができ、現実的な見通しがたてやすくなると思います。



なお、「つなぎ融資」とは、これから建築する住宅が完成して住宅ローンが実行されるまでの間に必要な資金を一時的に融資するものです。使える資金の用途は、土地の購入資金や建物の建築資金(着工金・上等金など)に限られる等の制限があります。また、住宅ローンが実行されるとそのつなぎ融資分は一括返済しなければならず、一般的な住宅ローンの金利と比較して高い傾向にあります。
「土地先行融資」は、先に注文住宅を建てる土地の購入費用の融資を受けられるものです。購入費用の他にも土地所有権の移転登記等にも使えます。土地と建物で合わせて審査されるため、土地の資料だけでなく建物プランの資料もそろえる必要がありますが、住宅ローンの金利で借入れができるため、つなぎ融資よりは金利がやすくなります。

 

②優遇策の活用
マイホーム取得に際しては下記を含め優遇策がいろいろあります。優遇策の利用で資金計画が有利になる分、土地代に充てる予算にまわせるかもしれませんので、ぜひ活用しましょう。具体的には住宅面積等それぞれに諸条件がありますので、土地・建物を計画する段階で専門家にご相談下さい。



(a)住宅ローン減税・所得税控除
<認定住宅(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅)の場合>
 
入居年 控除期間 控除率 借入限度額
2022年~2023年 13年 0.7% 5,000万円
※上記以外に、住宅の性能によって条件が異なります。(詳細はこちら)

住宅ローンを利用しない所得税控除は、控除額最大65万円の「投資型減税」もあります。
(長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・2023年末まで入居の場合)


(b)住宅取得資金の贈与税非課税枠
親や祖父母からの資金提供に贈与税がかからない制度です。現在のところ、2023年12月31日までです。
 
贈与年 質の高い(省エネ等)住宅 一般の住宅
~2023年12月31日 1,000万円 500万円
※省エネ等住宅とは以下のいずれかが該当する住宅

①断熱等性能等級4以上もしくは一次エネルギー消費量等級4以上
②耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上もしくは免震建築物であること
③高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること


(c)こどもみらい住宅支援事業 
<新築の場合>
交付申請の期限は、2023年3月31日までになります。
 
ZEH住宅 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅など 一定の省エネ性能を有する住宅*
100万円 80万円 60万円
*断熱等性能等級4 かつ 一次エネルギー消費量等級4の性能を有する住宅 
※こどもみらい住宅支援事業について(詳細はこちら

 

【2】建物から考える土地の探し方

『土地を探す際、まず何を条件にしますか?』
土地を探されている方のお話をお聞きしていると、まずはエリア、そして広さ(面積)と価格、という方がほとんどです。土地の面積を算出された根拠をお尋ねすると、予算と相場から割り出される方がいらっしゃいます。
『土地の予算が3,000万円で、この辺の土地代の相場が坪100万円だから30坪の土地が買える。30坪の敷地があればガレージのスペースと2階建てで40坪の家が建てられるだろう。』
ざっくりの方向性としてはこれでOKです。ですが、この事だけにこだわって土地を選別してしまうと、 実際には希望する建物が建てられない場合があります。

例えば、建物計画には道路2m以上の隣接が鉄則です。それ以外にも、建ぺい率と容積率、或いは道路斜線や北側斜線といった、建物の規模や高さに関係する制限があります。敷地の形状によってこうした規制の影響の仕方が変わってきます。

反対に土地の単価が高くて30坪より狭くても、希望する建物条件次第ではぴったりという場合もある のです。気になる土地がみつかったら専門家の眼でチェックしてもらう事が理想です。



 宅地を販売している業者さんによっては、参考プランというのを作成してくれている場合があります。
たまたま、建てたい家の内容と一致していればラッキーですが、そうでなかった場合、まだその土地を 買うかどうかわからない段階で不動産業者にプランの作成は依頼しにくいですし、貴方が相当の見込み 客だと判断されない限りそこまで対応してくれる業者も多くはありません。

その点、住宅展示場は、各社いろんな経験、事例を有しているので、まずはお望みのプランが入りそうな敷地かどうか、プランの相談をされるのもいいでしょう。
具体的なプランまで依頼するかどうかは別として、ご希望の建物が建てられそうかの見解が聞け、土地探しの参考にもなるので一石二鳥です。希望の条件を伝えておく事で、住宅会社によっては、土地情報を紹介してくれたり、探してくれたりする場合があります。



①土地探しで知っておきたい基礎知識と注意点
何でもかんでも相談するのは気がひけるという方は、少し知識を身に付けておく事で、最初の基本的なチェック事項ならご自身でもある程度できるようになります。一部分だけにはなりますがご紹介します。何も知らないし判らないという不安が少しでも和らげば、気持ちに自信とゆとりが生まれ、落ち着いた目で土地探しができると思いますよ。


1.法規制
 
用途地域
都市計画区域内で、建築可能な建物用途等を13種類の区域で指定したもの。専用住宅であれば工業専用地域以外は建築可能。

建ぺい率
建築対象の敷地面積に対する建物の建築面積(水平投影面積)の割合。各用途地域ごとに制限が決められています。
建築面積とは柱や壁の中心線で囲まれた建物を真上からみたときの1階の面積。(算入基準有り)。角地や防火地域の耐火建築物、また、準防火地域の耐火・準耐火建築物には緩和があります。 
 
容積率
建築対象敷地面積に対する建物の延床面積の割合。
各用途地域ごとに制限が決められていますが、前面道路幅員が狭い場合は、指定容積率よりも低くなる場合があるので注意。たとえば指定容積率が200%の第一種住居地域は、道路幅員が4mだと160%に。

高さに係る制限
(日影規制・北側斜線制限)・・・特に北側の近接、隣接の建物に対する日影の影響を抑えるために建物の高さや形状に制限を設けたもの。行政によって各用途地域ごとに規制の有無、内容が異なります。

壁面後退
敷地境界線や道路境界線から、外壁面をある距離だけ離し、建物間の一定の距離を確保するものです。地域によって距離は異なりますが、民法では住居系地域では隣地境界から50㎝以上空けるよう定められています。例え建築上の規制がなくても、お隣との良好な関係を築く為に留意したいものです。

道路斜線
1.25A  1.5A  (Aは道路幅員)の2種類。
道路の反対側の境界線から当該敷地の道路境界線を上記の勾配で結んだ斜線を越えてはいけないという、建物の高さ制限です。道路境界線から建物を後退させて建てる事ができれば、後退した距離だけ道路幅員が大きいものとみなされて斜線にかからない、という緩和措置があります。斜線制限は、天空率によっても緩和されることがあります。天空率とは、ある地点から天空がどれだけ見えるか、どけだけ建物で塞がれているかで建物を立体的に制限するもので、北側斜線についても緩和のために使われる場合があります。
*法規制の詳細は、こちらをご覧ください。


2.道路の種類
 
一般の方にはあまり知られていない事ですが、前面道路の性質や状況で、建物計画が制限される事があり、資産価値に影響する要素は無視できません。敷地に接している道路が公道か、それとも私道か? 私道の場合は誰の所有かも確認しましょう。建築基準法42条2項道路なら、道路中心から2mまでを道路とみなす為、建築対象の敷地面積が減少する事も。等々、道路に関する建物との関係については多くのチェックポイントがあります。
*詳しくは、「道路幅との関係」に記載しておりますので、そちらをご覧ください。


3.地盤(地耐力)
 
地震対策を考えると、土地の地盤の強さは無視できない事項です。周辺の地質調査データを、インターネットのサイト上で調べる事ができるエリアもあります。各行政庁のハザードマップは、地震時の揺れの予測の他、浸水履歴情報等も公開しています。また、斜面に土砂などを積んで平らな敷地に造成した盛土は地盤が弱い場合が多いため調べておきましょう。「盛土マップ」などで検索すると、調べられますので、ぜひご確認ください。昨今は免震住宅を希望される方も増えてきました。免震住宅は液状化や不同沈下の可能性がある土地には不向きと考えた方がよいので、免震住宅建築を前提に土地を探される方は特に、早い段階から地盤について留意してください。


4.工事
 
道路が私道の場合は、道路の所有者から、上下水道、ガス管工事の為の掘削同意を取れるのかを確認しましょう。また、工事車両が出入りしにくい道路(くねくね、狭い等)だと、建築資材の搬入が小運搬になり、建築費が割高になる可能性が高くなります。



 

②敷地の特徴を活かす家づくりのポイント
きれいな土地、例えば正方形、長方形といったバランスの取れた矩形の敷地や角地は、当然土地代も比較的高くなります。反対に、路地状敷地や変形敷地、敷地内に高低差がある土地は割安になります。最近は住宅メーカーの設計技術もどんどん進化し自由度が高まっていますので、在来工法のメーカーでなくても敷地の特徴を活かしたプランが随分可能になってきました。
矩形の土地だと、プランも建物の形状もある程度一定のものになってしまいがちですが、敷地に特徴がある事で、それを活かした特徴ある家づくりが可能になります。


●「袋路状土地」と言い、道路に面している長さが短く、奥で膨らんだ形状の土地です。

道路から家の中が直接のぞかれない、道路を通る車の騒音の影響を受けず静か、といったメリットもあります。大きな窓で開放的な家づくりを考える方にとっては選択肢のひとつではないでしょうか。土地の価格は道路への面し方で影響しますので、袋路状土地はそうでない同じ条件の土地よりも価格がぐんと割安になります。
 

 

●変形した土地も矩形の土地に比べて、価格的には割安になります。

その理由は、単純な長方形や正方形の建物の配置が難しいからなのですが、建物は単純な形だけがすべてではありません。中庭(パティオ)を中心に家族のコミュニティが自然発生するプランや変化に富んだ空間づくりは、変形敷地こそ、その可能性を秘めています。
 

 

 

●敷地内に高低差があると、整地にお金がかかるだけ、と思っていませんか。高低差をそのまま活かして、地下住戸を設けては如何でしょう。

その理由は、単純な長方形や正方形の建物の配置が難しいからなのですが、建物は単純な形だけがすべてではありません。中庭(パティオ)を中心に家族のコミュニティが自然発生するプランや変化に富んだ空間づくりは、変形敷地こそ、その可能性を秘めています。

 

*容積率については、こちらをご覧ください。
 
 

【3】土地建物にかかる経費

 

建物の竣工間近のお施主様に出会った際、時々お見受けするのが、「次から次へ予定していなかった費用がかかって、もうクタクタですよぉ。いつまでこんな感じが続くんでしょうか?」と疲れ切ったご主人の姿です。
土地代と建物代は勿論覚悟の上で家づくりを始めたものの、細かい処での費用を深く考えておられなかったとの事。お金に困るという事では無く、予定していなかった出費が次から次へ生じる事が精神的な不安と負担になるとの事でした。人生は先が見通せて予測がたてば、準備や方策をたてる事で、クリアできる事も多いのに、不測の事態が次から次に起きると、それだけ精神的負荷が高くなります。

家づくりは大きなイベントですので、予測できる事はしっかり予測して、無理無駄の無い計画を進めて頂きたいと思います。


下図は、一般的な家づくりの課程で生じる費用を列挙したものです。土地代と税金、保険料以外の料金には消費税もかかりますので注意しましょう。
土地を購入する段階から、建物その他の費用を概算でよいので試算しておきましょう。時々見直して、随時明確になった金額に差し替えながら、予算配分を調整して堅実な住まいづくりを進めましょう。

【4】おわりに


以上、土地購入の段階からの資金計画の大切さ、建物入居に至るまでの経費の内訳をご案内するとともに、知っておくと安心な建物と土地との関係について、ご説明しました。


最後にもう一つ、土地探しのポイントを。
土地を選定する際には、是非、朝、昼、夜と時間帯を変えて、そして休日だけでなく平日も見に行かれる事をお薦めします。休日のお昼には判らなかった環境が平日に発見できたり、その逆も然りです。例えば道路の交通量は、平日と休日でその様子ががらりと変わる地域もあります。休日は静かでも平日は賑やかな環境だったという事もありえます。望む環境は、条件が異なる状況で確認しましょう。

土地は、物件毎に異なる性質を有しています。機械で規格品として大量生産できるものではありませんので、予算をはじめ諸条件をかんがみると、これぞと思える土地を探し出すのも一苦労のように思えるかも知れません。しかし一度頑張って手に入れれば一生ものどころか、子や孫にまで残せる財産です。

その為にも、遠回りや失敗をしないよう、必要な知識や情報を得る手段として、住宅展示場の相談会、セミナー等で専門家の話を聴き、具体的には住宅メーカー等に積極的に相談する事はたいへん有効だと考えます。

是非、納得のいく土地を取得して満足のいくマイホームを実現してください。


※2022年6月6日時点の情報を元に更新しております。本文内で紹介している制度や法令などはご利用前に必ず最新の情報をご確認ください。


監修・情報提供:川道 恵子(一級建築士)
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