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世界のモダンハウス

世界各地の参考にしたい個人住宅を順次紹介していきます。
住宅展示場で実物を見る前にイメージを膨らませ、あなたの家づくりのヒントにしてください。

【第11回】異素材を組み合わせた家

白くフラットな一階と水平ラインを強調したダークグレイの二階とのコントラスが効果的な正面。

タイで人気の街に住む

タイの現代住宅と聞くと、どんな感じの家を想像されるだろうか。熱帯のイメージからすれば開口を大きくとったオープンな箱型のものが浮かんでくるかもしれないが、今回紹介する住宅を見れば、日本の住宅と変わらないと思うだろう。もともと日本の住宅も「夏を旨としてつくることが良い」という意味のことが徒然草には書かれているくらいだから、似ていても不思議はない。
 この住宅は、タイの首都バンコクの郊外、バンナー地区にあり、スワンナプーム空港にもアクセスしやすい、バンナートラット通りにある。新高架鉄道の駅があり、イケアのようなテナントを含む巨大なショッピングモールも人気で、今後ますますの発展が予想される人気のエリアにある。施主は若い夫婦で、土地を買い、建築家に設計を依頼するほどトレンドに敏感な富裕層。夫婦が求めるデザインの趣向もはっきりしており、センスの良い家を望んでいた。

デザイン性の高い自然志向の家

右側の建物は施主の両親の家。緑も生垣も共用し、室内からも楽しめる。

 「施主のご夫妻が希望されたのはコンパクトな住宅でした」この住宅を設計した建築家のエスカルック・スタポーントナパットは言う。バンコクにある設計事務所、リンクアーキテクトの主宰者だ。タイの東大とも言われる、最難関のチュラーロンコーン大学で建築を学んだ。アメリカ、ジョージア工科大学の大学院で修士過程を終え、さらにニューヨークのアートスクールでアートも学んだ。アメリカの建築事務所での実務経験を経て2008年に独立、活躍の期待される建築家である。

施主の両親の家と、境界を分けず、つながっているようなイメージで見通せる。

 「お二人は、建設費も維持費も少なくてすみ、ミニマムな機能が集約された使い勝手の良い空間を設計して欲しいと依頼されました」。
 デザイン的な特徴として、屋外の空間をうまく使って緑を集め、これを内部からも感じられるようにしている点があげられるだろう。幸いなことに隣は施主の両親の住む家である。生垣を共用することができるし、二棟並ぶことで、あたりのイメージを融合できる。

 二階のほぼ中央のデッキ張り空間のテラスは、この家のすべてのリビングにつながっており、タイの街並みによくあるコンクリートの箱型の建物とも共通した部分があると言えるだろう。

開放感のあるリビング。ワンルームで奥はダイニングエリア。
色を控えめにして、黄色系と灰色系を対照とした。

機能を集約した平面計画

灰色と白のテクスチャーの違う箱を交互に組み合わせて変化を出している。

 この家は構造としては、二つの主要なコンポーネントに分けることができるが、それぞれのテクスチャーと色を生かすようにデザインが融合されている。片方はハードな素材と構造で構成され、もう片方は軽くつくられ、前者が後者を支えるような仕組みになっている。しかも、その要素部分は、構造と素材を変えている。例えば、固いエリアは、安定性を求めて、鉄筋コンクリートと石組みでできており、その間に木毛セメントの断熱材を入れ、厚みがあるが重くならないようにしている。
 正面から見るとグレーのキャンティレバー部分が印象的である。前面を広くとり車二台分の駐車スペースを確保している。一階の白壁に赤みのあるドアが目を引く。

リビング&ダイニングを庭側から見る。二層吹き抜けで開放感がある。カーテンの緑も全体にマッチしている。

 一階は少しだけ床面をあげているので、玄関から段を登ってリビングとなる。少し暗く狭い緩衝空間を抜けてワンクッション置いてから、自然光溢れる明るいリビングに入ると開放感がより強調される仕掛けだ。リビングは庭側のガラス開口を大きくとり、天井は二層分のダブルハイトである。その奥にはさらに二階の廊下がロフトのようにも見えて開放感がある。

階段途中からリビング奥のダイニングエリアを見る。カウンターが見えるが奥はパントリーとキッチン。

 リビングとダイニングは兼用で、その奥はパントリー(食品貯蔵室)とキッチン。その並びにトイレ、洗濯室、タイ料理専用の別のキッチンを配している。向かいはトイレとシャワー、その隣はメイド部屋(階段の裏側)。暑い気候であるためだろうか、バスタブを置く風呂場はない。

コンクリートと木という二つの異素材をあえて組み合わせた階段。

 リビングから二階への階段も、途中まではコンクリート、そこから上は木製とし、あえて二つの異なる構成要素を組み合わせている。

 二階は、玄関の上に主寝室とトイレ、シャワー室。その背中合わせに同じくトイレ、シャワー室を置き、建物裏側にもう一つの寝室とウォークイン・クローゼット、その右隣にはスタジオと名付けた同サイズの部屋が二つある。ここは将来の子供部屋として使えることを想定している。その向かいはテラスで、リビングを見下ろすように開けた空間となっている。ここには、今後、植栽を配することを考えていて、室内に居ながらも屋外を感じ取ることができる。
 この家に見るように、建物の素材は内部だけでなく外部も重要。それはカタログを見るだけでなく、実際のモデルハウスで確かめることにより具体的に理解することができる。また、自分の趣向を調べることもできる。早速住宅展示場に足を運んで素材感をチェックしてみよう。

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