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世界のモダンハウス

世界各地の参考にしたい個人住宅を順次紹介していきます。
住宅展示場で実物を見る前にイメージを膨らませ、あなたの家づくりのヒントにしてください。

【第27回】リゾートホテルのような平屋づくりのエコ住宅

ブラジルのプライア・ヴェルメーリャにあるカシューナッツの木に囲まれた家

自然豊かな2,583平米の広大な敷地に建つ家

カシューナッツの木に囲まれた家

 日本から見れば地球の裏側、ブラジルのリオデジャネイロは、南米では第3の大都市。カーニバルで知られ、ブラジル最大の観光地として2016年にオリンピックが開かれたこともまだ記憶に新しい。イパネマ、コパカバーナなどの有名なビーチがあり、世界に知られた美しい港やコルコバードの丘のキリスト像はあまりにも有名だ。そのリオデジャネイロから海岸沿いにおよそ200キロ南へ行ったところが、今回紹介する住宅がある街プライア・ヴェルメーリャである。大西洋の海岸と自然保護区の森林に挟まれたこの美しく静かな場所は、リゾート地として知られ、近隣にはエコロジカルな高級マンションなどがあり、宅地としても絶好のロケーション(場所)として注目を集めている。

出典:google map

設計した建築家はこの家を「カーサ・ドス・カジュエイロ」と呼んでいる。ポルトガル語で「カシューナッツの木の家」という意味である。

家の周辺に南米原産のカシューナッツの木が生い茂る、まさに「カシューナッツの木の家」

その呼び名の通り、2,583平米の敷地の前側はカシューナッツの木に占領されているのがいかにも南米らしい。カシューナッツは南米原産の常緑樹で、開花後大きな赤いリンゴのような果実がたくさんなるが、その下に勾玉のようなナッツをつけて地面に落とす。木は成長すると10メートル前後の高さにまでなり、まるでこの家を守るように生い茂っている。

リゾートを意識し周囲の自然と融合

立面図 傾斜地の広大な敷地を利用して建てた理想的な平屋。

 なだらかに傾斜した敷地に長く伸びるように建つこの家は平屋である。広い敷地内には小さな東屋のような離れもある。敷地にゆとりがあるなら、平屋の家こそ快適で理想的といえるかもしれない。終の住処とするならば上下の移動のない平屋は、高齢になってからも暮らしやすい。日本の敷地条件ではなかなか難しいかもしれないがブラジルのような国では容易であろう。

平面図。32mもの長い廊下を軸に、各部屋を繋いでいる。
左:リビングから廊下を見ると、奥まで一直線に続いているのが分かる。
右:部屋と部屋の間は周辺の風景も取り込み、ゆっくり自然を楽しむプライベート感が味わえる。

自然豊かなランドスケープ(景観)の美しさを残すために、周辺の木立を含めた環境全体を上手に取り込めるよう配慮されて建てられている。それは平面図(図4)で見ると良く分かる。32メートルもの長い廊下(通路)を中心にして、そこから各室が飛び出すように配置され、その間にはランドスケープを取り込むための空間を持たせることで、どの位置からも周辺の自然を眺めて楽しむことができるような形となっている。樹木のあるところは「プライベート・パティオ(中庭)」としても有効だ。

左:リビングから続く外部と内部を融合する屋根とコンクリート床で構成されたテラス空間。
右:離れには、立地条件に合わせてサーフボードを格納する仕掛けがある。

またテラスを広く取って、その上をリビングの天井から続く屋根で覆い、床も同様にフラットに続く室内と外部を融合するつくりとなっている。このテラスも自然を取り込もうという発想から計画されている。敷地はビーチに近いということで、離れには半屋外のサーフボードを格納する棚がある。プチホテルかサマー・ヴィラ(別荘・宿泊施設)のようなリゾートの感覚と機能を組み込んでいる。

左:リビングのある社交エリアは、落ち着きある空間美でまとめている。
右:個別の空間は適度に外と繋がるコンパクトなつくりとした。

内部は、明確に空間が分けられているのもポイントだ。リビングのある左側(図4)はソーシャルエリア(社交場)として、右側(図4)はくつろぎのスぺ―スとして設計されている。
リビングはソーシャルエリアとして大空間を実現し、その大空間を3つの金属柱で支える構造だ。天井は厚さ12センチの集成材(グルーラム)で統一され、余計な装飾は一切ないフラットな空間が魅力的である。床には打ち放しコンクリート、薄い茶系のインテリアで統一された空間は、居心地の良さを演出している。

左:ソーシャルエリアは、ガラス張りで周囲の眺めを取り込むことができる開放感がある。
右:リビングとは異なり、垂直シャッターで仕切るエリアはプライバシーを重視している。

またソーシャルエリアはガラス張りとしているので、周囲180度の眺めを取り込めるのもポイントだ。その他にも適度な繋がりを意識したつくりも特徴的で、ソーシャルエリア以外は、外部との境界を垂直シャッターで仕切り、プライバシーの確保と強い日射からの保護を図っている。

自然の風と光を循環させるパッシブハウス

エコへの意識と住み心地を追求した住環境がつくり出すハイセンスな家

この家のもう一つ特徴は、環境にも住人にも優しいパッシブハウスとしての機能を持っている点だ。パッシブハウスでは、夏は涼しく冬は暖かく、冷暖房器具を使わなくても快適に過ごせるような仕様としている。この家が特に力を入れているのは、自然の風や光を上手に循環させて室内環境を整えることである。それは、床から天井までの大開口を至る箇所に設け、絶えず空気を循環させ、換気を行い、自然光を取り込む設計に他ならない。周辺の自然を取り込むだけでなく、環境に合わせて開放的な家のつくりとしたのは必然といえる。

パッシブハウスはドイツのパッシブハウス研究所の規定条件を満たしたものとされている。日本でも2009年から取り組み、これからの家づくりには重要な要素のひとつである。 パッシブハウスは特定の工法や建材を必要とせず、敷地の気候に合わせて計算することで最適な建物を建てる手段である。コストパフォーマンスやエコ意識の高まりで今後さらに関心を集めるだろう。

住宅展示場には、さまざまなエコ住宅が展示されている。また、エコに配慮のある、設備や建材、コストパフォーマンスの良い住宅のアイディアもあるので、ぜひチェックしてみたいところだ。

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